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チベット通の友人から、最近こんな体験を聞いた。ラサの街でミネラル水が必要になった。現地のガイドに頼むと、あちこち店を回るが買おうとしない。目の前にあるのになぜかと聞くと、「漢族の店では買いたくない」と吐き捨てるように言った▼秘境の代名詞だったラサへ、中国軍は1951年に進駐した。それ以来の抵抗と鎮圧の悲劇は、今なお、きなくさい余香をとどめている。加えて近年は、胡錦濤政権が力を注ぐ「西部大開発」による、漢族の経済的な席巻が著しい▼つのる不満が、湿ることのない火薬に引火したのか。チベット人の僧侶や市民を巻き込んだ大規模な騒乱がラサで起きた。治安当局と衝突して流血の事態になり、多くの死傷者が出ている▼表向きには、双方の融和が進んでいた。ラサのポタラ宮前では、高い掲揚台に中国国旗が毎日あがる。町並みは整備され、生活は「漢化」が目立っていた。だが、それを「チベット文化の破壊」と感じる人も多かった▼騒乱は、静かなデモへの弾圧か。それとも、チベット仏教の指導者ダライ・ラマ14世側の策動なのか。互いが主張して真相は不明だ。明治に秘境へ入った日本人僧、河口慧海(えかい)の『チベット旅行記』を思い出す▼「母と別れる」という言葉が、かの地にあるそうだ。自分の言うことが違っていたら最愛の母とも死に別れる。つまり、偽りのない誠実の誓いだという。非難合戦は不信しか生まない。中国は大国として国際社会に実相を明らかにするべきだ。「母と別れる」の誓いとともに。
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    木子熊 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()